序章

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   梅雨時の夜は、雲の無い夜空を見上げるには丁度好い季節だと思う。  感情と言う言葉を思い出すかのように呟いた。  晴れた日は気温が高く蒸し暑ささえ感じる季節。  一転夜になると夜風が心地よい季節でもある。  『梅雨』と言うと、しとしと雨とジトジトな蒸し暑さと言うイメージがある……らしい。  『らしい』と言うのは、あまり実体験が無いからで。  親に言わせれば、梅雨と言うのはそう言うものらしいけど、私が物心付いた頃からそんなイメージを覚えるような記憶は無い。  『空梅雨』と言う言葉があるらしいけど、そんな空梅雨が続いているせいだという。  ニュースを見れば連日『異常』の文字が躍っている。  どうやら昔の人から見れば、今は『異常』な状態らしい。  くどいようだけど、『らしい』と言うのは、あまり実感が無いからで。  物心付いた頃からこの『異常』な状態が続いていれば、『正常』な状態を知らない私にとってはこれが『正常』と思えてならない。  ……そう、あの出来事も同じことが言える。  事件と言えば聞こえは良い。  しかし、私にとってあの事実は別の意味を持った。  この退屈と思っていた日常、無意味と思っていた日常に光を……彩を載せてくれたの。  宇宙人との遭遇。  そんなことが本当に起こるなんて……。  私達の常識が常に正しいとは限らない。  頭ではわかっていても、実感がわかないものだ。  しかし、それを実感させてくれた出来事。  これから綴る物語はそんな事。  小さな価値観に縛られない物語……。  ここだけの内緒の話だ。
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