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「そんなにこの世界が嫌か?」
か弱い光を降り注ぐ星空を見上げながら紫暮が私に聞いてきた。
聞くまでもない、イヤだからここにいるのに……。
「……紫暮はどうなのよ」
こんな退屈な世界……無意味な世界をどうやったら好きになるって言うのだろう。
紫暮ならどう考えるの?
「う~ん。俺は、それなりに気に入っているぜ。
面白い事もあるしな。」
「どんなところが?」
同じことの繰り返しのどこに面白い事があるの?
「例えば……そうだな。
この間始まった宇宙刑事ものはすっごく燃えると思わないか?
あの配役もそうだが、今は少なくなった勧善懲悪ストーリーは正に時代を超えたヒーローの王道だと思うぜ!」
紫暮の力説が始まった。
そう、運動神経も良く快活で人懐っこい人気者は、実はヒーローオタクで日夜修行に励んでいるとは誰も知るまい。
私くらいなもんだよ、知っていても変人扱いしないのは。
今日も修行のためと言って持ち歩いている模造刀をすぐ脇においてある。
もちろんそのまま持ち歩いているとお巡りさんに捕まるので布の袋に入れてあるけど……持ち歩くのもどうかと思う。
「紫暮、あんた結構人気あるんだから普通にしていたら言い寄ってくる娘も沢山いると思うんだけどね」
皮肉交じりに、心にも無い事を言ってしまう。
ホント自分に嫌気がさしてしまう。
「何言っているんだ。
俺からヒーロー精神を取って何が残る」
……自分で言うか?
と言うか、十分残る物の方が多い気がするよ、私は。
思わず心の中で突っ込みを入れてしまうが、もちろん声には出さない。
言ったとこで紫暮の力説が返って来るのが目に見えているからだ。
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