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「あ~あ、誰か私を宇宙へ連れてってくれないかな」
こんな日常から抜け出せるなら、喜んでついてくのに。
「そうだな、その時は声かけてくれよ。 一緒に行くからな」
「何であんたが一緒に来んのよ」
「そんな連れないコト言うなよ。架苗と俺の仲じゃないか」
両手を掴んで、涙目で懇願。
いちいちオーバーなアクションをする紫暮は昔とちっとも変わっていない。
少しは成長しろよ、と思う反面そこが紫暮の良さでもあるのかな。
ついつい顔がほころんでしまう。
「しょ、しょうがないわね。その時は誘ってあげるわよ」
紫暮の手を振り切って、そっぽを向きながら言葉を吐きすてる。
握られていた手に紫暮の温もりが残っている。
この温もりやあの真っ直ぐな瞳のせいで私素直になれないんだ。
そう、紫暮が私を素直にさせてくれない……。
「それでこそ俺の相方だ」
「いつあんたの相方になったのよ」
「昔からに決まっているだろ」
何当たり前のコト言っているんだ。と言わんばかりの笑顔で答える紫暮。
私また非道いこと言ってるね。
なのに何でいつも笑顔でいられるのよ。
なんだろ。急に寂しく思えてきた。
「そろそろ帰る……」
やるせない思いのまま、言葉を吐き捨てた。
私また自己嫌悪になってる……。
いつものやり取りと言えばそれまでだけど、相手が紫暮だから繰り返してるんだ。小さいときから側にいる紫暮だから……。
家に帰れば、両親の期待を背負う『娘』と言う役割が待っている。
私じゃない私が待っているんだ。
再び退屈な日常の繰り返しがまた始まる。
帰る気持ちも足取りも重くなるよ。
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