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「カナちゃん。昨日どこに行っていたの?」
いきなり背後から抱きついてきた。
『カナちゃん』と言うのは、中学時代からの友人である木野瀬衣音(きのせ いね)ちゃんがつけた私の呼び名。
少し変わった性格の娘で、オカルトに強い関心を示している。
まぁ、そういう意味では私も他人のこと言えないかもしれない……。
栗色の髪に赤いリボンのポニーテールが印象的な小柄な女の子。小柄と言っても私と大差ない一五0センチ前後だ。
香水を忍ばせるお洒落を教えてくれた子でもある。
衣音ちゃんは苺の香り、私は蜂蜜の香りが好き。
「衣音ちゃん。いきなり何するかな?」
衣音ちゃんはいつも通りポニーテールを大きな赤いリボンで結んでいる。
背後から抱きつかれている私は、そのポニーテールを引っ張って衣音ちゃんを引き剥がすのだ。
人なつっこい衣音ちゃんは、何度剥がしても抱きつき挨拶を止めない。
人前だろうがお構いなしなんだ。
彼女は、春牧東高校にオカルト研究会を仮申請してる。
しかも現在その仮活動を認められている行動派。
対して私は、特に何もせず……いわゆる帰宅部なのだ。
……比べちゃうよね。やっぱ……。
「昨日夜どこにいたのかな?
ひょっとして宇宙人と会ってたりしていない?」
「残念、UFOには会えなかったよ」
衣音ちゃんは私が宇宙へ憧れている事を知っている。
宇宙人を信じている事も、偏見を持たずにしっかりと受け止めてくれている。
紫暮以外では初めてだった。私をバカにしなかったのは……。
もっとも、衣音ちゃん自身オカルト好きと言うこともあるのだろうけど……。
こんな、非現実的な会話が日常的にできるのは彼女くらいなものだ。
人目を気にもせず話しできるんだから。
友達と思える存在があるのは衣音ちゃんのお蔭なのかもしれない。
「そっか、残念。スクープネタ探してるんだけど何か無い?」
「そうね。特にネタになるような事はないよ」
だからって、教室でこの話題……やっぱり恥ずかしいよ。
窓の外に視線を移しながら、彼女の話に素っ気無く答える私。
正直彼女のテンションの高さは見習いたいほどだ。
何故かいつも心が沈んでいる自分とついつい比較してしまう。
どうして周りを気にせずにいられるの?
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