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心の中がほんのり暖かくなった。
そして、すぐに真紀と仲良くなっていった……。
「透子さぁ~ん?」
頭を撫でられてから、安心するなんて……、簡単すぎるなぁなんてぽつりと思った。
目の前に二本の指が見える。
それを手で阻止する。
「目潰しするつもりかっ!」
「だって透子、あっちの世界から返ってこないからぁ」
にひひっと友が含み笑う。
「写し終わったし、昼ご飯食べて帰ろうぜい」
ノートを渡されて立ち上がる。
「もちろん、奢りだよね?」
「ファミレスでしゅ」
廊下に出ると、夏の熱気を感じる。
時間はどれだけ願っても止まってはくれない、非情に残酷に、そして包みこむように優しく、平等に過ぎていく。一緒にいられる時は……こうしている間も減っているのだ。
「手島くん」
下駄箱に着いた途端に甘えた、妙に鼻についた声が聞こえた。
「何?」
少し迷惑そうな声が応える。
その声音に思わず、笑んでしまう。
心は正直だ。
彼女の声音には明らかに「媚び」が含まれていたから。
「はい」
「?、これは?」
不思議そうな声。
気になって、そうっと下駄箱の陰から覗く。
華奢な体のライン、さらさらの長い髪。
白い肌の……。
美少女、と。
無造作にTシャツを羽織った、少し茶色よりの髪。綺麗に整った涼しげな顔立ち。
二人が寄り添う姿は、ぴったりとはまって見えた。
美少女が差し出したタオルを、彼は受け取ろうとはしなかった。
「忘れたんでしょ?
タオル」
にっこりと笑ってもう一度、差し出す。
「教室にあるだろうし……、遠慮する」
そう言って、流れた汗を、服で拭う。
鍛えられた腹筋が、覗く。
その陽にちょうどよく焼けた肌が、妙に艶かしくて、思わず後ろを向いた。
「使ってくれていいのに」
「気持ちだけ、サンキュ」
声だけが聞こえる。そして……足音。
「透子、平気?」
ばくばくした心臓を押さえてると、にやにやと友が笑う。
「手島の、フェロモンにやられたか」
「そんなんじゃ…」
赤くなって反論する……、だけど、最近真紀は……色気があると思う。
バスケをするようになって身長も伸びたし、力もついた。
バスケの試合によくでるようになって……
大学のスカウトを受けてから、自信がついたのか、さらに磨きがかかったような気がする。
どんどん……、遠くなっていく気がするけど…、真紀が決めた道だから、何も言えない。
…もっと違う存在なら…
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