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取り巻きの女の子達が、フォローする。
可愛いと、同性でも構ってしまうらしい。
「うん……。浴衣どんなのがいいかな?」
気を取り直したように、紗羅が話を変える。
彼女の瞳の先には、透子が選ぼうともしなかった、ピンクや赤の浴衣が広がっている。
「紗羅は色白いから、赤とかは? パステルも可愛い」
「ピンクのがいいんじゃない?」
きゃぴきゃぴと、楽しそうな声。
「絶対赤だね。これ買って、手島にお誘いメールしなよ」
「うん、頑張る」
明るく紗羅が応える。
「行こう」
そっと、友を促す。
帰り道は無言だ。
「紗羅……、手島のこと、好きなんだね」
するりと友の口から考えてたことが出てきて、驚いた。
「うん……そうみたいだね」
「まぁ、そうかとは思ってたけどね」
友は感想をもらす。
「透子」
「よかったね」
何気ない言葉がほんの少し嬉しい。
「でも、紗羅に誘われたら……、そっちに行っちゃうかも」
自分で思って、悲しくなってくる。
「ないと思うよ。性格からして」
友の言葉はシンプルだ。そして、わりと正しい。だから、信用できるし、そうであってほしいと思う。
「先約は透子なんだし、自信持てば?」
「う~ん、なかなかね」
真紀がもしも、約束を断ってきたら……怖い予感がしたけどそれは隠して、歩いた。
断りのメールが来ないことだけを祈った。
祭が近くなってくると道吊された数々の提灯に光が灯る。
日が長くなっているから、夕方に歩かないとその光景には出会えない。
コンビニの帰り道、夕日と提灯の明かりを見ていると、なんだかロマンチックな気分になる。
いつもは暑くて早く帰りたいのに、たまにはいいものだなと思う。
「透子」
後ろから、望む声がした。
「何してるの?真紀」
「合同練習の帰り」
足早に近付いてくる真紀から、石鹸の匂いがした。
「合同って……、大学の?」
シャワーを浴びてきたのだろう。
さらさらの髪が揺れるだけで、ドキドキする。
「そう。透子は、こんな時間にコンビニ?」
「うん、ノートがなくなりそうだから」
ちらりとコンビニ袋を真紀がみた。
「受験生は大変だな」
「余裕な発言だね。むかつく」
真紀のからかうような言葉に、右手を振り上げる。
「悪かったって」
笑ってその右手を掴み、下ろされる。
「あ、そうだ」
真紀が思い出したように呟く。
「花火大会のことだけどさ」
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