11人が本棚に入れています
本棚に追加
ドキリと心臓がはねた。
真紀の顔は、夕闇に包まれて、よくわからない。
「待ち合わせにしないか?」
「え…?」
思わず足を止めた。
「待ち合わせ。俺、しばらくこの時間に帰ることになりそうだから。……いいか?」
顔を見なくても優しく笑んでいる声音だった。
断られずにすんだと安心して、ほっとした。
「うん。じゃあ、公園に6時くらい?」
「あ、もう少しかかるかも。30分くらい」
言って髪をかきあげる。
「うん」
素直に返事をして、肩を並べて歩く。
何も言わなくても、合う歩調。
何を言わなくても、安らげる空間。
大好きな、真紀の隣。
できるなら……、真紀もそう思っていてくれればいいのに…。
夕闇が夜に代わる空を見上げて、そう望んだ。
最初のコメントを投稿しよう!