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私は、紅の中に立っていた。
上も紅、下も紅。
右も左も、前も後も紅。
紅の正体は椛だ。
どこからともなく椛が降ってきている。
舞い落ちた椛が床一面を覆っているのだ。
…床?
いや、どうだろう。
ただの地面かもしれない。
私は試しに足元の椛を靴の先で掻き分けてみたが、またその下の椛が見えてくるのみであった。
私がいるのは屋外か、屋内か。
それすらも判らない。
遠方を見ようにも、降りしきる椛に視界が遮られるのだ。
見えているのは、精々、10メートル程度。
私は椛に囲まれていた。
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