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「失礼しまぁ~す…」
ドアを開けると、ここ数週間ですっかりかぎなれた薬品のにおいが鼻をついた。
「あら 勇名くん。また来たのー?」
あきれ顔の学校医、島津先生(24)独身。なかなかの美人だが、今の俺には笑顔を返す元気も気力もない。
黙って保健室カードを差し出すと溜息をつきながら受け取られた。
「全く。あんまサボってると成績おちちゃうわよ?院…禅寺…勇名っと。あら、ちょっきいてるの?」
利用者ファイルに名前を書きながら注意してくる島津先生。を、軽くスルーし俺はベッドへ向かう。
「もぉっ!本当にカワイくないんだからっ!!」
16歳 男子に可愛さを求めるべからず。
カーテンを閉め、固いベッドに横になる。
大体、これはサボリじゃない。正当な保健室の利用だ。って、心の中で弁解。
一応のため自己紹介はしておく。
院禅寺 勇名(16)♂。
体力も成績も身長も体重も ほぼ平均の普通の高校生だ。
友好関係もいたって健全で、家族間のドロドロとしたトラブルは皆無。見た目は、、、、え?、、、、まぁ、うん、、、、、。
そんな平凡を絵にかいた様な俺が、自分で言うのも何だが最近おかしい。
どこぞのかよわい女の子の様にすぐ貧血を起こし、立ちくらみやめまいは序の口で、少し動けば頭がガンガン痛くなって足元もおぼつかない。
こないだなんか貧血も出て、、、。
おかげで体育はつまらない、保健室常連客化し、周りからはサボリマンという不名誉なアダ名をいただく、友達には下手に気をつかわれるまで俺の機嫌はすこぶる悪い。
(あー、、、、ダル、、、)
目を閉じるが、夏のまぶしい日光と、それを更に反射させる白いシーツのおかげで、寝る気にはさらさらなれなかった。
まぁ、それは いつもの事で、その対処法はもちろん心得ている。
俺は隠しもっていたPSPを取りだし、音量0で電源を付けた。
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