切っ掛けは、

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今日は生徒会の日です 昼休みの集会はいつも皆遅れて来るので、今生徒会室にいるのは私と生徒会長の塚原くんだけです いつもだったらこんな時はぼけっと空想をしているのですが、今回は塚原くんと雑談に挑戦してみることにしました 今月の学年目標は「チャレンジ!」です 「塚原くん」 相手に聞こえる声で話し掛けられるようになったのはつい最近のことです 「どうかしたか」 塚原くんが私を薄っぺらいガラス越しに見つめます 縁無しの眼鏡は真面目な彼にとても似合っていました 「ナマズは全身に味覚があるって知ってた?」 「…豆しば、か」 「知ってるんだ」 驚きました 「先週、テレビで見た」 塚原くんの鉄仮面は崩れませんでしたが、声は少し照れているように感じました 塚原くんが豆しばを見ているのを想像するのはまた今度にしておきます 「毎日一つは無理だけど、毎週一つ豆知識交換しようよ」 今度は塚原くんが少し驚いた顔をしました 私も驚きました 意味の無い誘いです 即席 そんな言葉が浮かんで、ぱちりと音を立ててはまりました これならナンパのように遊びに誘うほうがまだマシです 断られるでしょうか こくり、と喉が鳴りました 「……別に、構わないけど。面白いものは用意できないよ」 チャレンジ達成です ほっ、としました 「そんなのいいよ」 「そう、じゃあ、来週からよろしく」 おかしな挨拶です 塚原くんは私が思っているのと違って、案外不器用なのかもしれません 「こちらこそ、よろしく」 そう思いながらも合わせるように返した私は端からみれば、彼と同じ不器用な人、なのでしょう  切っ掛けは、 (これが私たちの出会いです)
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