第一章 幽霊屋敷

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「でも近藤って、しょっちゅう夜遊びしてたんだろ?なんで二日くらい帰ってこないだけで、そんな大騒ぎしてんだ?」 「うん。兄さんの話によると夜遊びはよくしてたんだけど、帰ってこなかったことは初めてなんだってさ。それで親が心配して警察に電話したんだって。それに--」 薫は拓也たちから二歩ほど先でくるりと振り向いた。そして言葉を継ぎ足す。 「最後に目撃されたのが、幽霊屋敷の近くなんだって」 遼がああ、と軽く頷く。 この三沢町は、都心から離れた山間にひっそりとたたずむ小さな村だったが、近年の再開発により規模が増し、元々の村だった旧市街と新たに広がった新市街とに別れていた。 新市街は、再開発に伴って移住してきた人が大半を占めていた。拓也の家もその一人だ。その頃はまだ出来たばかりの新興住宅地で、本当に何もなかった。 整備されたばかりの更地がほとんど。人が住んでいる建物は片手で数えられるほどしかないほどの殺風景な場所だった。 今では、新しい家が立ち並び、新しい顔にも出逢えるようになった。大きなレジャー施設はまだないにしても、コンビニやデパートなどができ、不便のない立派な住宅地だ。 変わって元々村の合った旧市街は、手をつけておらず、近代化とは程遠い場所で、あちこちに古めかしい家が建っている。他にあるのは小さな商店と畑とたんぼに山。目だった遊び場もない寂しい場所だ。だが、一つだけ目の引く物があった。町の外れ、たんぼが延々と続く道を行った先に、ぽつんと建っている一軒の大きな屋敷--幽霊屋敷だ。 「何であそこだと駄目なんだよ」 「幽霊屋敷だよ!あれだけ怪しいだから、絶対に何かいるよ。幽霊とか妖怪とかさ。ねぇ、遼?」 「うーん、どうだろうな」 幽霊屋敷は長らく誰も住んでいなかったようで、古めかしい家がある旧市街の中でも、一際古さを感じさせるような家だそうだ。それだけなら単なる古い屋敷で終わるのだが、目を引く理由が二つある。 一つ目は、幽霊屋敷を囲う森。幽霊屋敷には、屋敷を囲む森があるそうだ。まるで神社のように森の入口には鳥居があり、屋敷まで長い階段が通じている。神社でもないのに何故鳥居があるのかは全く分からない。
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