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やがて、老爺が溜めていた息を吐く頃には、その液体は焦げ茶色に変じていた。まるで周囲の土壁と同じように。
結果に、老爺は笑った。しばらく顔の筋肉を動かしていなかったのか、ひきつった笑みではあったが、誰の目にも笑みだと判断できるほどには老爺の歓喜が滲み出ていた。
空になったフラスコを適当に投げ捨て、改めて実験物の生成されたフラスコを掴む。老爺は少しの間無感動に眼前にかざしていたが、やがて一縷の躊躇もなく足元へと垂れ流した。
それらは地面に隠れ、地中へと消えていった。
今までの疲れがどっと吹き出し、老爺は崩れるように膝を付いた。しかし、そのまま意識を手放すことはしない。このままでは勝率百%のゲームだ。それではつまらない。
机を支えにし体を立て、指先で机上の新しくあいた空間を撫でると、一瞬前まで何もなかったそこに機器が存在していた。
老爺が気力を振り絞り、その前に座す。
これから彼が残すのは、後世へのメッセージだった。
あるいは遺言であり、あるいは犯行予告とも取れるメッセージ。
機器の上部が赤く発光しているのを確認して、レンズにうつる老いた自分を見つめ、老爺は強張った口をゆっくりと開いていった。
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