プロローグ

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 思い出の中の母は、元気な女性で、とにかくいろいろなところに出かけるのが大好きなひとだった。  長いサラサラのロングヘアーに、背は並みより高く、いつも正しくあろうとした。  悪いことをしたらきつく叱られたし、何度も喧嘩した。それでも、最後には仲直りして優しく頭を撫でてくれた。  父はそんな母にぞっこんで、この世に母以上に素敵な女性はいないと言い張るおかしな人だった。それでも、自慢の父だった。  友達からは、あんなにかっこいいお父さんうらやましい、と言われてきた。実際、ほんとにかっこいい。そして、頭が抜群にいいのだ。  今の自分の中くらいの成績を見て、自分はきっと母親ゆずりの頭なのだと思うけど、父がいつも教えてくれてたから平気だった。  そんな父だが、実は血はつながっていない。ほんとうの父親は、自分が赤ん坊の時に死んだのだという。それはそれで悲しい。だけど、今もこれからも、父は自慢の父だ。  大好きな母と自慢の父、二人が行方不明になったのは、ちょうど中学ニ年の頃だ。  もともと親戚とは仲が良くなかったため、ずいぶん辛い思いをした。たくさん泣いた。  そんなこともあったが今は、母が勧めてくれた紅花学園に在学中だ。  行方不明の両親は心配だが、思い出になりつつある。もちろん、両親のことを見捨てたわけじゃない。  親友と呼べる友達や、俺様だけど優しいパートナー、その友達との生活がとても充実している。  でも、そんな生活も一瞬で崩れて行く。  はじまりは一通の手紙。  学園の理事長宛に書かれた、母からの手紙だった。  そして運命は、私たちを放っておいてはくれなかった。平凡で楽しい日々が、私の誕生日をきっかけに、ボロボロと崩れ落ちたのだ。
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