night+3 すべてのはじまり

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 吸血鬼。人の生き血を吸い、生きる糧とする生き物。  今ではもう、人々は吸血鬼の存在を伝説であると思い込むようになった。  だが遥か昔、遠い過去では、人々は彼らを化け物と呼び、彼らは人々を弱い生き物と見なしていた。  度々襲われる人々。彼らはやがて吸血鬼と対立し始める。  そんな時代に、敵どうしでありながらも禁断の恋に落ちた一組の吸血鬼と人間がいた。 「お願いです、父上。闘いを止めてください」 「ならぬ。刃向かってきた以上、我々は闘う」  吸血鬼の男は、愛する女の世界を、家族を、仲間を、守りたい、と強く願っていた。 「父様。お願いですから、こんな意味のない争いをお止めください」 「目を覚ませ。……お前は化け物にたぶらかされただけなのだ」 「いいえ! 彼は決して化け物などでは」 「我々の血を飢えを満たすまで吸い尽くす。あれが化け物でないなら、一体何だっ!!」  女もまた、意味のない争いを止めようと必死だった。愛する人と穏やかに過ごしたい。ただそれだけの願いも叶わないのか、と。  
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