Episode Ⅰ 勇気の証

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 コロッセウム内に、場内アナウンスが響き渡る。 「べンヴェヌート! 皆さん、さあ始まりました。第7回M.Aコッルターレコングレッソ!第1試合はヴェネツィアのバンビーノことマルコ~レヴェナント~!対するはローマの黒きマンナーロ…ロビエンコ~グロッサム~!」  歓声が鳴り響くと共に、二機のM.Aがコロッセウムの中央に出てくる。  1機は漆黒の機体、ガタイがずんぐりむっくりのドミナント。メインカメラが2つ胴体の胸部分に付き、アームはショットパンチャー付きのトリプルフィンガー。  もう片方はエンジ色をしたガトリングパンチャー付きのファイブフィンガー、単眼カメラのイタリア製ティグレ。  試合開始の合図と共に、2機のM.Aが走りだした。  アッチャーロと呼ばれる鋼鉄製の剣を、双方共に装備している。  2機はアッチャーロを抜き、コロッセウムの中心で刃を合わし互いに火花を散らす。  双方力比べをしていたが、そのうちパワーで勝るドミナントが優勢になり、ティグレを剣で押し退けた。 「ちっ直接組合うのは分が悪い!」  ティグレが体勢を立て直し、走り出す。 「はははっ!お前ごときのティグレでは、このドミナントには勝てんぞ!バンビ」  ドミナントがティグレを追う。  コロッセウムの壁までくるとティグレが、急に反転して剣を構えた。  「袋のネズミかぁ!止めだ!」  ドミナントの剣が、突き刺さる。しかし突き刺さった場所はコロッセウムの壁だった。ティグレが、間一髪かわしたのだ。 「何!?」 「もらったのはこっちだ!」  ドミナントにティグレの剣が、反対に突き刺された。しかし、装甲の厚いドミナントに、致命傷を与える事は出来なかった。 「小僧…許さねぇ。このドミナントに傷を付けやがって…。しかし…これならどうだ!」  コロッセウムの観客席…  黒い服に身を包んだ1人の男が、試合を観戦していた。雰囲気がどこかしらマルコに似ている。 「マルコ…!?ヤバい!そいつから離れろ!」  男は、興奮気味に立ち上がって叫んだ。  ドミナントの三本の指が、機体に刺さったマルコの剣の刃を握りしめた。 「うっ!?剣が抜けない…」 「バンビ…惜しかったな」  ドミナントは自分の剣を手放し、その腕でティグレの喉元にショットパンチを打ち込んだ。
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