Episode Ⅰ 勇気の証

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 「おやっさん…そのあだ名は言わないでくれ。…もう兵士じゃないんだ。……普通の一般人さ」  「おやおや?一般人の人間が、M.Aに乗って戦争ごっこかい?今やM.Aコッルターレコングレッソは合法となってるが、やってる人間の中身は変わっちゃいね~。みんな世間から、爪弾きにされたはぐれ者さ」  なかなか許しを出さない老人の態度に、苛立ちを感じたロッシーニョは、我慢しきれずカウンターを両手で激しく叩きつけた。  「おやっさん!いや、デル大佐!あんたとは長い付き合いだったがこれとそれとは別もんだ!俺はやらねばならないんだ!…どんな事があってもね」  デルはロッシーニョの本気を感じると、メガネを再びずらし彼を見た。  「…本気かい?」  デルはロッシーニョの目を見据えた。ロッシーニョの目は、狼が獲物を狩る時のような眼光を放っていた。彼は本気のようだ。デルは、即座に彼の本気を察した。  「……お前さんがそこまで言うなら、いいだろう。…付いて来な!」  デルは立ち上がり、ロッシーニョをカウンターの奥へと導き入れた。  二人は細い廊下を歩き、裏にある倉庫へと向かった。  倉庫に着くとデルが、電灯のスイッチを入れた。  まばゆい光の中、1機のM.Aが照らし出された。そこには、銀色に光輝くドミナントと言われる機体が置いてあった。  そう…あのロビエンコと同じ機体だ。  驚愕の表情を浮かべ、独り言のようにロッシーニョが呟いた。  「こいつは…ドミナントじゃないか…。どこで手に入れたんだ?おやっさん」  「そう…こいつはドイツ製のドミナントだ。パワーでは、こいつに勝る物は無し。ドミナントには、ドミナントだ」  言葉を発するデルの目は、少年のように光り輝いている。  「でもこいつは、2048年に製造中止になって、今や幻の逸品。ロビエンコの機体が、最後の一台だと聞いていたが?」  デル老人は、左腕を叩いて言った。  「ここだよここ…。ドミナントは、ドイツの警察隊の第二期モデルだ。装甲は堅いが、なんてったってパワーがありすぎる。使い勝手が悪くてな…。48年に製造中止になって、今や幻の品だ。しかもこいつは、ただのドミナントじゃないぞ。儂が、精魂込めてチューンナップしてある。操作性は従来機に比べ、格段に良くなってる。こいつを扱えるのは、お前だけだよロジー…。並大抵のパイロットじゃ、こいつは扱えねー」
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