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デルはゆっくりと機体に近づき、にやつきながらドミナントの脚部を撫でた。
「まあ、格納庫がないなら、この倉庫を格納庫代わりに使うがいい…。メカニックも儂が担当してやる」
「ありがとう…大佐」
デルは照れながら言った。
「大佐は止めろ…。儂も軍を隠居した身だ」
更に数週間後…コロッセウム内
ロッシーニョはドミナントのコクピットに搭乗していた。ゴーグルに僅かな光が反射する。
「この予選を勝ち上がれれば…」
ロッシーニョのドミナントは、真っ赤に塗装し直されていた。
その赤い巨体が、コロッセウムの大地を駆け巡る。
相手は、日本製のレイバー。
ロッシーニョが機体を滑走させる。
「遅い…」
ドミナントが、右手に構えた大剣を振り下ろた。
剣は、相手の左肩から脚部にかけて機体を削り上げた。
ホイッスルが、鳴り響き試合の決着がついた。
勿論、ロッシーニョが勝利し、本戦への切符を手に入れた。
試合後の控え室
「流石だな…。お前の腕は、些かも鈍っちゃいない。それどころか、乗る度に機体とシンクロして行く感がある」
ロッシーニョは、何か考え事をしていた。
「…まだまだだよ、おやっさん…。あの機体をまだフルに生かし切れてない感じがする。…だけど…奴は来るのか…」
「…黒きマンナーロ。奴は来るさ…必ずな…。それが奴の生きがいだからな…。しかし、奴を倒すのは簡単じゃないぞ。あの機体をあそこまで操れるんだからな…パイロットとしては超一流だ」
「わかってるさ…おやっさん。それでもマルコの為に、やらねばならない…」
「…奴はお前だ!昔のお前さんだよ」
ロッシーニョはデルを見た。
「おやっさん…」
彼は、昔の自分を思い出していた…。
…あれは中東の情勢が悪く、ロッシーニョがいたイタリア軍も戦場に駆り出されていた。
…ある作戦の時だった。
相手は中東ゲリラの一派。先行する歩兵隊との間で、銃撃戦が行われていた。
民兵は伏兵作戦として、軍服を身に纏っており、敵も味方もわからない状態であった。
味方は軍服を身に付けたゲリラ軍を、味方だと思い近づいた所を銃撃されたのだ。
後詰めに到着したロッシーニョ率いるM.A小隊は、どちらが敵か味方か把握できない状態にあった。
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