第一話 春雷

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生暖かい雨が肌まで染み込んでくる。 雨に濡れた衣服がべったりと張り付いて、重い。 いつになったら着くのだろう。 ミオは先を行くヨシノをうらめしそうに眺めた。 「まだ着かへんの?」 それには答えず、ヨシノは、 「ええ雨やのぅ。お清めの雨や。神さんが降らしてくれたわ」と、のんびり言う。 傘くらい持ってくればいいのに。 雨は降るのだから。 いつも雨は降るのだから。
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