青年と火災と紅の鎧

3/4
前へ
/16ページ
次へ
エリオのその言葉を待っていたといわんばかりに紅の鎧は右手に作り出した焔の剣をエリオからまだ離れた距離だというのに振るった。 エリオは直感した、その一撃があの焔の壁を作り上げた斬撃であることを。 自らでは防ぎきることが出来無いと思い、正面から受け止めずにエリオはサイドステップでかわす。 しかし、そこでエリオは自らがおこなった行動が失敗だったこと知る。 この場に居たのが彼のみだったなら良かっただろう。 しかし、エリオの後ろにはあの少女が居た。 地を這う炎壁が少女に迫り、当たると思った瞬間、炎壁が不自然な軌道を描き逸れる。 それは、まるで紅の鎧があえて軌道を逸らしたようであった。 この行動でエリオを直感する、目の前の敵の目的はあの少女で、少女の生存が必須であるということを。 それはエリオには吉報でもあった。 つまり、こちらが考えて行動せずとも相手が少女に攻撃を当てないでくれる。 それは多少であるものの、この戦闘の難易度が下がったことを意味する。 二人の圧倒的な実力差は変わりはしない。 だが、エリオには勝算のようなものがあった。 正しく言えば逃げる算段、逃算というものだ。 「ストラーダ、デューゼンフォルム」 自らの使い手の命を聞き、ストラーダはその形状を変える。 噴射口が左右両方に二つずつ現れた姿からもその機動性の高さは窺える。 エリオの武器はストラーダの機動性を生かしたスピード。 それを用いた撹乱戦ならばエリオにも勝つことは出来なくとも時間は稼げる。 先ほど前では少女に敵の攻撃が当たる可能性があったため行うことが出来ずにいたが、その心配は先ほど無いことは相手が証明してくれた。 (今度はこっちの番だ!)
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加