始まりの行方

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AM.9:17 「…初浬?もうまだねてるの?早く起きなさい!」 寝坊してしまった。 変な夢を見た気がする、具体的には思い出せないけど、きらきら輝く何かに思わず手を伸ばそうとしたけど、結局伸ばした手を引っ込めて逃げ出した夢。 何故かは分からない。 柔らかい光は綺麗で確かに手をまでは欲しくて欲しくてたまらなかったたのに急にそれが恐くなった。私が触れると汚れてしまいそうで。 「初浬!早く学校にいきなさい!!遅刻よ!!」 母が騒いでいる。 いい加減布団から出ないと本格的に怒られそうな気がする。 「…ちょっとは黙ってよ」 思わずでた一言。 「……」 瞬間何か言いかけた言葉すら呑みこんで黙る母。 思わず自分で自分を刺したくなった。 一一全てが思い通りになる力。 言葉を外に出すだけ。 たったそれだけで。 人間を操ることは勿論のこと動物だって時間だって総てが自分の思い通り。 誰もその歪みに気付かない。 例えば、目の前に居る母なんかに感情的に「死ね」なんて言うと笑顔で自分の首を締め始めるもしくは台所から取ってきた包丁なんかで自分のお腹目掛けて切腹紛いもしてしまう、周囲はその事も何の疑問も抱かず、葬式でもあげている。かといって、死んだ母に「生き返れ」なんて言っても生き返らない。 「立ち上がれ」なんて言うと死体でも立ち上がる。魂の抜けた状態で命令を聞かれても滑稽なだけだ。 全てといっても、魂までは操れはしない。 完全なる全てではないけれど時間までも操るのだから、全てと言っても過言、ではないと思う。 気味が悪いし、あまりこの力は遣いたくないんだけど…時たま、言葉にしなくても自分の一瞬でも願ってしまったことが起こっちゃう力の暴走?みたいな。 聞こえは良いかもしれないけど実際は不便極まりない。 何気なく視線をやった先の目覚まし時計の針ががぐるぐる巻き戻っていた。 AM.7:15 うん、いつも通り。 さっさと準備して行かないと、また時間が可笑しくなっちゃうや。 「お母さん、どいて」 とりあえず、制服にでも着替えましょうか。
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