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懐かしい空気を体で感じ、空を仰ぎ見る。都会とは違う、田舎独特の自然の香。
半年ぶりの帰郷に、一之瀬哉(いちのせはじ)は思わず顔を綻ばせた。
駅前などは大分都会に近づいてはいるものの、やはり都会とは違う、哉の好きな綾神村(あやがみむら)がそこにあった。
長旅で疲れた体を大きく伸ばし、腕時計に目をやる。
「もうすぐかな」
待ち合わせは8時50分。
現在時計は8時46分を示している。
重たい荷物を地面に下ろし、辺りを見渡すと、哉の事を呼ぶ声が耳に届いた。
「哉くん~!」
手を降りながら、こちらへ向かってくる女性。
哉の母親である一之瀬秋(いちのせあき)は笑顔で哉を出迎えた。
「おかえり哉くん」
「ただいま」
都会の高校に通う哉は、その高校の寮で暮らしており、母と会うのも半年ぶり。
十六歳といえどやはり子供。
自然と込み上げてくる嬉しさにより綻ぶ顔を抑えるのは難しかった。
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