序章:雀

2/11
370人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
私は学校の帰り道怪我をしている雀を見つけた 可哀想だからちょっと手当てでもしてあげようかな でも下手に素人の私が手当てするのもいけない気がする こういう時ってどうすれば……? 私は携帯を取り出して渡の番号を電話帳から探す 渡っていうのは渡千夏、私のクラスメイト 獣医の娘だから多分こういう時の対処も分かるよね 早く出て…… 繋がった 「もしもし、渡!?」 『井上? どしたの?』 渡は暢気にそう返してくる 渡は普段から暢気だから仕方ないって言ったら仕方ないけど 「大変なの!! 雀が怪我してて!! 渡、こういう時ってどうすればいい?」 『雀が? 待って、お父さんに診てもらえるか確認してくる』 渡はそういうと携帯を置いていったらしく遠くで『パパ!!』っていうのが聞こえる 渡ってお父さんのこと『パパ』って呼んでるんだ、可愛い 『まだちょっと時間かかるかもって 私今そっち行くから場所教えて』 「うん、場所は――」 私は渡に場所を説明する 幸いここは渡の家の近くだし、分かるよね 「もうちょっと我慢してね」 私は雀の傍にかがみ込む こんな時にこう思うのもどうかとは思うけど、雀ってこんなに近くで見たの初めてだな やっぱり可愛い 私は小さいものが好き 小鳥とか子猫とか子供とか 小さければいいってものではないけど 微生物とかはそれほど好きじゃないし その中でも雀はすごく好きな方に入る 雀をこんなに近くで見れる日が来るなんて夢みたい でも今はにやけてる場合じゃない こんな可哀想な雀を前ににやにやするなんて不謹慎だもん 渡、早く来てよ……
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!