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「ただいまぁ~」
玄関に入る前に少年は羽をはずしてスイッチを押した。
すると銀の羽は左右に分かれて両の手に青白く光る腕輪として変化した。
ドアを開けて家に入る。
丘の上に鎮座した家は、今は家にも帰ってこない父が建てた物だ。
古ぼけた赤煉瓦に煙突、昔父がよく話していた遠い島の家だそうで、幸せの象徴なんだとか。
僕の使っている機械も父が降りたった島から教わった物らしい。
ほかにも僕の部屋には父が知り得た知識を書き記した日記から復元した物が溢れている。
父は冒険家だ。
いや、探検家。
僕が生まれるずっと前からそうだったらしく、そんな父に憧れた母は父に嫁いだとか。
だけど、僕が物心が付いた頃に父はどこかに行ってしまった。
母は毎日泣いていたっけ。
兄はそんな母と僕を養うために警官教練所に通ってしまい、今は……。
「キリイ、またおまえ空を飛んだらしいな」
大きな体を押さえ込むように制服をきちんと着ている黒髪短髪の男はコーヒーを飲みながら口を開いた。
「なんのこと?」
肩をすくめて見せたが、兄のシルリはこちらに背中を向けたままだ。
「同僚が発見して追跡をしたようだが振り切られたようだ」
「振り切られたのなら、きっと姿は見れていない、だとしたら僕である証拠はないよね」
頭に手を組んでリビングを歩いてキッチンにある冷蔵庫を開いた。
中には瓶に入った青い飲み物がある。
「振り切られたのはおまえだからだ、我々のビークルが振り切られるのはこの島じゃおまえの羽くらいだから」
「わからないよ、誰かがスピードビークルを作ったのかも、もしくはほかの島からの客かも」
瓶のふたを開けて中身を腹に流し込んでみる。
弾ける喉越しがたまらない。
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