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「捨てるとか捨てないとかの問題じゃないと思うけど」
「じゃあ、なんだ」
「僕は僕らしく生きていたいだけだよ」
「ここにいても生きていけるじゃないか」
「少なくともやりたいことを我慢してね」
手首のリングをさすりながら僕は答えた。
青く鈍く光るリングを見ているとどうしてか心が落ち着いてくる。
「やりたいことってのはなんなんだ、ここを捨ててまでしたいことなのか?」
僕は少し笑って答える。
「僕は世界のすべてが見たいんだ。『捨ててまで』じゃなくて『ここからでないと』できないことなんだよ」
「なんでそんなことがしたいんだ」
吐き捨てるように言ったその言葉に少し悲しみを覚えた。
「そんなこと……僕からしたらここに居続ける意味こそが『そんなこと』だよ」
「なに?」
「僕の人生は僕が道を決めるから僕の人生なんだ」
兄の顔に怒りと悲しみが浮かんでいた。
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