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「んっ…」
朝日が差し込むと、昨夜は少年の側についたまま眠ってしまっていた槐は目を覚ました。
「…………なっ!!」
しばらく寝ぼけた頭でぼぉ~としていたが少年が眠っていた場所を見て愕然と絶句した。
そう、そこにはもう少年はいなかった。
「っ…!お、おい!氷雨!!」
驚いて言葉を無くしていたがハッと目が覚めすかさず氷雨を大声で呼ぶ。
「なんだ、朝から騒々しい……」
寝室から出てきた氷雨はいつも以上に抑揚のない声で言っていたが些か不機嫌そうな声色だった。
「ガキがいねぇ!!」
慌てふためいて言った槐の言葉で始まった少年探索。
「……自分から出て行ったのならもう放っておけばいいだろう…」
そんな事かとどうでも良さげに目を伏せる。
「馬鹿野郎!!あんな傷で一人にさせたらすぐにくたばっちまうだろうが!」
怒気をあらわにし、氷雨に怒鳴るとすぐさま駆け出して行く。
「……あの子供が来てから俺は何度驚けばいいんだ?」
一人取り残された氷雨は目を見開いてポツリッと呟いた。
「仕方ない…」
ふぅっとため息をつき、槐とは反対の方向に歩き出す。
その表情は言葉とは裏腹に綻んでいたのは恐らく、氷雨自身も気付いていない事実なのだろう。
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