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「はぁ…まさか、あそこまで食料がないとはな~」
頭をガリガリ掻き、ただいまフラフラ歩きつつ本日の(あわよくば一週間位先までの)食料になる山菜などを探索中。
「夢中になると周りに眼がいかなくなるなるからなダメだな…治す気は無いが…」
そう言いながら目に付いた物を採っていく。
「そういや……あの辺にも沢山あったよな…」
ふっと立ち止まって呟くと方向を変え道が無い藪(ヤブ)の中へと歩き出す。
「確かこっちだったよな…しばらく行ってないから自信はねぇけど…」
「おぉ~着いた着いた。」
多少迷いながらもたどり着き、髪や服に付いた枯れ葉等を払いながらも得意気に声をあげる。
「俺の勘もまだまだ捨てた物じゃないな、うん」
鮮やかに彩られているイチョウや椛(モミジ)を眺めながら山菜を拝借して歩く。
「…相変わらずの荒れようだな、この寺は」
その鮮やかな通りを抜けるとある古びた寺に一言呟く。
「まぁ、何十年も無人じゃあ仕方ないか」
今度はそう言うと苦笑し寺に近付く。
「懐かしいな…今度掃除でもしてやりに来るか……ん?」
舞う紅葉達に混じって
薄い桃色が飛んできたのを目敏く見つけるとそれを手の中へとおさめた。
「……なんだ?」
それを指先で摘んで凝視する。
「…桜か?こんな紅葉シーズン真っ只中に?」
そう呟くと風の吹いた方へと足を進めた。
「ひゃぁ~、コレは驚いたな…」
思わず驚愕と感嘆の声を上げ、目を見開いた。
目の前には世にも見事な桜。
「今、秋だよな? 確か…」
呆然として呟き見渡すと、周りは紅や黄の紅葉舞う中そこだけ桜が舞っているという幻想的な世界。
「狂い咲き…ってヤツだよな、コレ…」
ただ圧倒されるだけだった。
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