第一章 ‡強奪?違う違う、拾ったんだよ‡

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  「さて、そろそろ帰るか…」   さっきの騒ぎで地面に散乱した山菜を拾い集め、ついでに男達が落とした金品を拾って持っていた袋にいれる。    「あ、そういや…」   呟くと男達三人が残して行った檻に目をやった。    「コレ…なんだろうな? あいつらの口振りから生き物だと思うけど」   檻に近付くとそれに掛かっている布に手をかけた。   「…逃がしてやるか、このままにしたら死んじまうし…」   そう言ってバッと布を取り除いて中を見た時、槐は一瞬言葉を失い目を見開いた。   「っ……マジかよ…」   なんとかそれだけ呟くとしゃがみ込んで姿勢を低くし、中をまじまじと見た。   「……狂い咲きの桜の次は雪の聖霊かなんかか? おい」   呟くその声は言葉とは裏腹に抑揚がなくどこか呆けたような声だった。 檻にいたのは横たわっている全体的に真っ白でボロ布を纏った幼い子供。   「…寝てんのか?」   そう言って凝視して、檻の鍵に目がいった。   「……なんかあったかな…」   そう言い、ポケットを探りるとピンを見つけた。  「お、あったあった」   そのピンを鍵穴に差し込み数分動かしていると鍵が地に落ちた。   「よし、開いたな」   檻の扉を開けると子供をそっと抱き上げ檻から出す。   「綺麗な顔…人形みたいだな…」   抱き上げ改めて顔をまじまじと見て呟く。   「高く売れそう、ねぇ…確かにな…」   子供の全身を見渡して布の一部、子供の脇腹が辺りが赤黒くなっているのを見つけ眉間に皺を寄せた。   「おいおい、こんな小さなガキに何無茶な事やってんだよ…」   子供の纏っているボロ布を捲り、体中にある鬱血の後や脇腹から伝うまだ乾ききっていない赤黒い液体を見て、顔をしかめ険の孕んだ声で言った。  「寝てるというよりは気を失ってるだな、こりゃ」   そう言うやいなや先程山菜と一緒に採った薬草等で応急処置を済ませ、抱き上げると全速力で駆け出した。   「死んだりしたら許さねぇからな、ガキ!」   日が暮れた山にそんな声が谺した。    
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