狩人フレア

3/3
前へ
/5ページ
次へ
「お帰りフレア!今日の収穫は?」 「ただいま!サム!!聞いてよ!兎が六匹も狩れたよ!」 外で薪割りをしていた友人のサムに、フレアは誇らしげに袋いっぱいの兎を見せた。 「凄いな…。でもフレア、こんなに仕留めてどうするんだ?」 サムのいきなりな質問に、フレアは目を見開く。 「どうって…。こんだけ狩れば、明日調子が悪くても大丈夫だろ?それに俺、兎のパイ大好きだし…。」 不思議そうに、しかし、当たり前のようにフレアは答える。 そう聞いたサムは、目を伏せながら神妙な面持ちをする。 「?サム?」 「フレア、お前にとって、兎は只の食料なのか?」 「当たり前だろ?何言ってるんだよ?」 その言葉に、サムは溜め息をつく。 「今のままでは、お前はきっと一流の狩人にはなれない。」 「は?何言って…。」 「兎は只の食料じゃない。兎だって、俺達と同じで生きているんだ。それを理解出来ないなら、お前は必ず罰を受ける。」 そう言って、サムは空を見上げる。 「今日は満月。月の魔力が満ちる日だ。ま、飯を食ったら早めに寝ろよ。」 「お、おいサム!!」 「じゃあな。」 そう言って、サムは隣の小屋に消えた。 「何だよ、サムの奴…。」 ふてくされながら、フレアは兎の入った袋を持ち上げる。 (俺が狩って兎が狩られる。たったそれだけの事じゃないか…。) 下界では、兎を飼う人間もいると聞く。フレアにはそれが理解出来なかった。 「あ~もう!何か腹減った!!早く兎を料理しよっと!」 すたすたとフレアも自分の小屋に戻った。 空には、真円の月が美しい光を湛えながら浮かんでいた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加