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「お帰りフレア!今日の収穫は?」
「ただいま!サム!!聞いてよ!兎が六匹も狩れたよ!」
外で薪割りをしていた友人のサムに、フレアは誇らしげに袋いっぱいの兎を見せた。
「凄いな…。でもフレア、こんなに仕留めてどうするんだ?」
サムのいきなりな質問に、フレアは目を見開く。
「どうって…。こんだけ狩れば、明日調子が悪くても大丈夫だろ?それに俺、兎のパイ大好きだし…。」
不思議そうに、しかし、当たり前のようにフレアは答える。
そう聞いたサムは、目を伏せながら神妙な面持ちをする。
「?サム?」
「フレア、お前にとって、兎は只の食料なのか?」
「当たり前だろ?何言ってるんだよ?」
その言葉に、サムは溜め息をつく。
「今のままでは、お前はきっと一流の狩人にはなれない。」
「は?何言って…。」
「兎は只の食料じゃない。兎だって、俺達と同じで生きているんだ。それを理解出来ないなら、お前は必ず罰を受ける。」
そう言って、サムは空を見上げる。
「今日は満月。月の魔力が満ちる日だ。ま、飯を食ったら早めに寝ろよ。」
「お、おいサム!!」
「じゃあな。」
そう言って、サムは隣の小屋に消えた。
「何だよ、サムの奴…。」
ふてくされながら、フレアは兎の入った袋を持ち上げる。
(俺が狩って兎が狩られる。たったそれだけの事じゃないか…。)
下界では、兎を飼う人間もいると聞く。フレアにはそれが理解出来なかった。
「あ~もう!何か腹減った!!早く兎を料理しよっと!」
すたすたとフレアも自分の小屋に戻った。
空には、真円の月が美しい光を湛えながら浮かんでいた。
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