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人混みから抜け出し、薄暗い路地裏に着く。
でも、人一人の気配さえない。
あるのは、ドラム缶と捨てられたゴミ袋等々。
悪臭が微妙に漂う中、僕は路地裏の奥へ進む。
奥に行くにつれて、日の光が遠くなり闇が深くなる。
「(…これはいないな、多分。)
よし、戻ろ──」
「飛鳥ッッ!」
「ぅわぁっ!?」
ぐんっ、と後ろから襟首を掴まれて引かれる。犯人は頼だ。声からして間違いない。
でも──様子が、おかしかった。
「飛鳥、走れ!」
「はっ!?ちょ、頼!?」
焦って急かしてくる頼に、ただならぬ事態を感じた。先を走る頼の後を慌てて追う。
しかし、頼は僕より足が速い。もともと、僕は体育会系ではない。頼は体力テストではブッチぎりの一位を獲得する程の体力馬鹿。
僕は頭と視力と集中力だけはいいが、こんな状況ではどれも役に立たない(気休めにであれば、先を行く頼が認識できるだけ。でもあくまで認識だ)。
にしても、頼は何をあんなに焦っていたのだろう。
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