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「おい飛鳥、大丈夫か?」
隣の席から不安げな声が聞こえた。
「大丈夫だよ、頼」
「ならいいけどよ!ほんっと嫌んなるよな、あの担任!偉そうにしやがって!ニホン国溺愛しすぎだっての」
「…仮にも頼もニホン国民だから、あまり言わない方がいいんじゃない?
きっと担任も気が立ってるんだよ、最近革命軍の動きが活発なんだからさ」
僕がそう言うと、頼──金井頼(かない より)は顔を顰めた。
「ちぇっ、別に思想の違いだけでゴタゴタやる必要なんてないだろ!俺がニホンのトップに立って戦争なんか終わらせてやるぜ!」
「頼…多分、ニホンのトップだって戦争が好きでやってる訳じゃないと思うよ?
てか、大丈夫?今日歴史の小テストだよ?」
そう言うと、頼は顔を真っ青にして教科書を急いで取り出した。…前に落第点を叩きだしたから危機感を感じたんだろう。遅いけど。
すると、頼が僕の耳元で小さく囁いてきた。
「あ、飛鳥…ちょいとテスト中、こーっそり、ちょっとだけでいいからさ…」
「何言ってんの、自力で頑張れ」
友人が堕落する様を平然と見ていられる僕じゃない。僕が頼にそう言ったと同時に、先生が入ってきた。
頼の絶望的な表情が、失礼ながら笑えた。
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