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状況が呑み込めなかった。どうして優奈が奴らに危害を加えるのか理由なんて分かるはずが無かった。ただ優奈がしてはならない事をしてしまったのだという気はした。取り返しのつかない何か。
──何かって?
「だから貴方自身には恨みは無いの。ごめんなさいね。本当に悪かったって心から思っているわ」
全然、申し訳なさそうにかおるが言う。
「そうそう。貴方、『儀式』って知っている?」
勇助の虚ろげな目をみて満足げに笑む。
「優奈は『儀式』をしたわよ」
背筋が凍り付いた。その言葉の意味。それだけじゃない。
──ああ、姉はどうして。
「……それじゃあ、殺し合いでも始めましょうか」
勇助は目を閉じる。
「喰い合いじゃなくて?」
それは覚悟ある者だけの眼光。
かおるは少しだけ目を見張り、そして笑む。
「そうね。どちらかが倒れるまで喰い合いましょうか」
──ああ、優奈。
(いいよ。共に地獄に行こう)
彼女を鬼に変えたのは紛れもない己自身。何故なら彼女は自分を映し出す鏡。
──何故(なにゆえ)分かれてしまったのか。
──何故(なにゆえ)一つにはなれなかったのか。
ああ、優奈……。
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