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「どういうことだ」
かおるは一瞥して言う。
「どうもこうもないわ。仲間の多くは惨殺されて、私は命からがら本島に戻ってきたの。貴方の存在を知っていたから探しだして復讐してやろうと思っただけよ。『優奈』にね」
喉が、からからに乾いていた。胃から熱い物がこみあげる。
(どういうことなんだ? 優奈)
どうしてか理由がずっと分からなかった。かおるが優奈の事を口に出すことも、どうして自分を陥れるのかも。どうしてそんなに憎むのか。
でも、これで──。
「全部、繋がったでしょう? 貴方が私に思う憎悪の気持ちは、そのまま私の思いよ。どうしてこんな惨い事をするのかって思ったわよね。私も思ったの。どうしてこんな酷いことをするのかって。私達はひっそりと生きていただけなのに。助けてって許しを乞うたわ。でも許してくれなかった。私を助けてくれたのは、まだ年端もいかない人間の子だったの。命をかけて救ってくれた。でも死んだわ。
──私の目の前で。」
小首を傾げながら無表情に言う。
「優奈が殺した」
頭に鈍痛がした。
「その時に何もかもが崩れていくのが分かったわ。でもあの子は私を救う為に死んだんだから生きなければ、と思った。この事も誰かに伝えなければ、この惨劇を止めなければならないって」
かおるが微笑む。悪意のある笑みだった。
「この事を知ったら優奈は恐怖でおののく事でしょうよ。大切な大切な半身には己の悪逆は知られたくない筈だから。おまけに己のせいで、大切な半身にまで危害が加わったのだし。
──どんな顔をするのか楽しみだわ」
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