予感

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「佐藤先生、どうかされましたか?」 急に立ち止まった佐藤に、さも面白そうに問いかける。 「い、いえ。いつも見慣れてる学校のはずなのに、おかしいな。夜になっていく様かな?何か少し怖くなってしまいまして」 須賀の大きな丸い瞳が、さらに一回り大きくなった気がした。 「佐藤先生って意外にチャーミングなんですね。でも……。」 須賀は体を学校に向けた。癖なのか小首も一緒に傾げている。 「……確かに夜の学校は少し不気味ですね。私も佐藤先生と一緒でなかったら、足がすくんでいたかも」 いたずらっぽい表情を浮かべて一歩、佐藤に近づく。 「──隠里(おんざと)高校」 佐藤はどきりとした。 その名前は、今はあまり聞きたくないような気がする。気付きたくない何かに気づきそうで……。 ──何かって? 「変わった名前ですよね。何かの隠れ里みたいな……。そういえばこの近辺は隠里っていう名前がつく場所が多いですね」 ねえっ、という顔をして上目遣いに佐藤を見上げる。頭の芯から、じんじんするような恍惚感が佐藤の頭を支配する。 「……隠す、という意味ではないみたいですよ。そもそも隠っていうのは、ここでは鬼を指すんです」 「──鬼を……」 「はい。ここは昔から鬼女の伝説がありまして……山姥(やまんば)っていうのかな?山姥は鬼女。鬼女が鬼で、鬼は隠で、鬼の里という事で隠里。昔の名残で隠里という名前はこの周辺に残っています」
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