2 戦友の忘れ形見

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ーーー2ヶ月前。 フェルゼン北東部。 辺境の山地・アデスブール。 『ロジェ、これ何!?この前の模擬試験ってバルテウスのだったのかよ!』 温かみのある古民家の玄関ドアを開けるなり、顔色を変えたレックスが一通の手紙を片手に入ってくる。 中にいた金髪の美女は、長身痩躯の身体をゆったりとソファに沈めていた。 彼ーーーいや彼女は、親のいない少年の母であり、また父でもあった。 『合格通知か。あんたの実力なら当然ね。簡単だったでしょ』 新聞に目を落とすロジェは特に驚く事もなく平然とした様子である。 『いや中々癖のある奇問が多かったよ……。しかも王立の名門校じゃん。うちにそんな余裕ねーだろ』 『お金の心配ならいらないわ』 『この前ヘルガー教授に論文提出したばっかなのに……急すぎない?』 当然の問いかけだとロジェは思う。 フェルゼンの辺境とはいえ通信環境は整えており、レックスには幼少の頃から〝それなり〟の知識と教養を叩き込んでいた。 12歳の時点で既に世間一般でいう高等教育も終えている。 だが田舎でつつましく生活していたからか本人は世間知らずの節があり、当然我が家の経済状況を知らない。 その為、飛び級で大学卒業した後は働きに出るつもりでいたようだ。 魔法学以外において全ての教育課程を終了しているにも関わらず、ここにきてなぜ学校に通う必要があるのかと疑問に思っているのだろう。 戸惑いを隠せないレックスにロジェは意思の強そうなライトブルーの瞳を向けた。 『世界を知るためよ』
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