2 戦友の忘れ形見

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『私はあんたに隠している事がある』 普段とは違う真剣な表情で突如はっきりと告げられた言葉に、レックスは金縛りにあったかのように動かなくなった。 『でもそれを話すにはあんたはまだ弱すぎる。だから強くなりなさい。肉体的にも精神的にもね』 するとレックスは黙り込み暫く間を置いた後、少し言い辛そうに口を開いた。 『……。それって、俺の本当の両親の事?』 『今は言えない。でもそうね、あんたに関係する事よ』 育て親であるロジェの事を気遣ってか、物心つくようになってからは両親の事について触れる事はなかったというのに。 普段は鈍感なくせ、こういう所だけは鋭い。 真実を知る者としてロジェの胸に苦い痛みが走る。 彼が生まれて16年。 本当にあっという間だった。 血の繋がりこそないが我が子のように育ててきた。 だが真綿に包み、保護するだけが愛ではない。 ロジェはレックスに対して成長を願う親心と僅かばかりの寂しさを感じていた。 そんな彼女の葛藤を知ってか知らずか、やがてレックスは覚悟を決めたように口を開く。 『……分かった。ロジェの言う通りにするよ』
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