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「えっ!?」
「マジかよ!」
「嘘だろ!」
あまりの奇行に取り巻きの暴力少年達が騒めく。
彼がいたのは3階だったからだ。
しかし高所から見事に着地したレックスは平然とした様子で刺さっていた自身の剣を引き抜いた。
角度によって明度が異なるスカイブルーの瞳。
間近だと圧倒される端正な容貌に少年達は息を呑む。
しかしその身のこなしは野生動物さながらで、カジュアルな服装も一般的な若者そのものだ。
よくよく見れば何て事はないと意を決したようにリーダー格の大柄な少年が口火を切る。
「……噂で持ちきりだぜ編入生。ギルバートに目つけられたらしいじゃねえか。残念だがお前、ここじゃもう終わったな」
「ギルバートって?」
レックスが問えば、少年達はいよいよ触れてはいけないものを目の前にしたかのように冷や汗を流し始めた。
「こいつ、やばいぜ……」
やがて取り巻きの1人が小声でリーダー格の少年に言った。
「舐めやがって!イワン、やっちまおうぜ!」
「そうだな、新入りにはここの礼儀ってモンを教えてーーやるよッ!!」
言い終わらない内に繰り出された重たい右ストレートをレックスはあっさりと左手で受け止めた。
「なっ!!?」
「イワンの拳を受け止めただと!?」
取り巻きは驚いた様子だがレックスは涼しい顔だ。
「……」
怪我をした少年を一瞬見やる。
それから真顔で包み込むようにゆっくり拳を握り締めていけば、目の前の少年の顔が苦痛に歪んでいく。
「あだだだだだぁぁぁぁーーーっ!?」
繊細な見た目からは想像もつかない程の握力の強さに、体格差があるにも関わらず気圧される。
「イ、イワン!?」
「どーしたんすか!いつもみたくやっちゃって下さいよ!」
取り巻き達が何やら喚いていたが、レックスは力を緩めない。
その瞳からは一切感情が読み取れず、正体不明の圧すら感じ取った大柄な少年に冷や汗が流れる。
「……なんてな!」
が、次の瞬間には笑顔であっさりと手を離してしまう。
「あっぶねー、初日から問題起こしたらロジェに殺されちまう……」
何やら表情を引き攣らせ小声で呟いている隙に、振り払うように太い腕が引っ込められた。
「…………畜生ッ!イカれた糞野郎が!タダで済むと思うなよ!」
やがて少年達はこれ以上関わるのは不味いと思ったのか、捨て台詞を残して去って行ったーーー。
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