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戦ったことがないとはいえ、七天の上位陣が脅威的なのは戦わずとも分かる。
それだけの戦力を相手にするとなれば、神帝と戦うのと同じくらいに構えなければならないだろう。
『それにこの戦い、お前は動かずにはいられないと思うぞ?』
「どういうことです?」
『謎の組織は、クラウン王国王女、アリス・クラウンを拉致している』
「な…に…?」
あまりの言葉に、シルバの言葉が曖昧に口から出る。
『お前の許婚が拉致られたと言っているのだぞ?』
そう。
魔界にある中立国でもあるクラウン王国。
七天第四席、『破邪者』イクス・リストレイが、『ライン渓谷の戦い』で魔王軍に協力したことから魔王傘下には入らない中立契約をしている国。
しかし、元から魔王はこのクラウンを傘下に下す気はなかった。
何故なら、弟の婚約者がいる国だからだ。
つまりは、弟のシルバの国の傘下になるべき国と判断した。
イクスに出した条件は、あくまでもイクスを戦線に交えるためのものだったのだ。
「アリスが…何故…」
独り言のように呟くシルバ。
『理由ならハッキリしているだろう?彼女しか持ちえない乖離能力。
確かにあの能力があれば、世界掌握も難しくはないだろう』
「…」
レイの言葉に、何も言わないシルバ。
それはレイの言葉を肯定している証でもある。
クラウン王家に代々引き継がれる特殊能力。
それが乖離能力。
全ての事象、概念、物体、数値などを木端微塵に分解する力。
その力を自在に操る術があるのだとすれば、彼女の能力は世界を滅ぼす鍵になりうる。
謎の勢力の狙いはそこなのだろう。
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