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「ぐぁっ!!」
灼熱の痛みが背中に奔る。
痛みは背中だけでなく、全身を駆けまわるかのように響いてくる。
傷口から流れる血の動きが更に痛みを増幅させる。
しかし。
「ぬぉぉぉぉ!!」
帝は痛みを振りきって背後のシルバに刀を再び向ける。
「邪魔をするでない」
シルバは、刀を握っている帝の拳を蹴る。
すると、帝の手から刀がすっぽ抜ける。
「くっ!まだだぁ!!」
帝は腰に差しているもう一本の刀を抜く。
しかし。
ザシュ!!
刀を抜いた瞬間、シルバの刀がシルバの胸を斬る。
右肩から左腹部にかけてまっすぐ入る赤いライン。
背中に加え、胸にも長い切り傷が入る。
「がっ」
もはや痛みなのか、何なのか分からない。
ただ一つ、辛いことだけはハッキリしている。
ここまで実力差がハッキリしているという事実が。
手も足も出ない自分の無力さが辛い。
目の前で当然のように立っている男が遠い。
七天第五席にまで登り、剣士の中で二番手と言われる『剣聖』にまで上り詰めた。
剣士最強は目の前だ。
だというのに。
剣神と剣聖にこれだけの差があるとは思わなかった。
遠い…。
遠すぎる…。
帝は奥歯をかみしめながら、シルバの前に倒れ込んだ。
「許せ。今は急ぐんでな。相手ならば後日相手になろう」
帝の耳に届いているかは定かではない。
だが、シルバはお構いなしに近くにいる馬へと駆け寄った。
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