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「ではお相手しましょう。天の神と呼ばれし、このウラノスが」
エルヴィスは金色の瞳を輝かせ聖に目を向ける。
ドンッ!!
その瞬間、聖の姿が消える。
そして、縮地の速度に乗った拳がエルヴィスの顔に放たれる。
しかし。
ドォン!!
聖の拳は、エルヴィスの数センチ前で止まった。
黄金の光をまとった聖の拳の前に、僅かに別の光が集まっている。
青い光の粒子が無数に集まりコースター程度の大きさの膜が展開している。
「な、何!?」
たったそれだけの光に、神聖術を体得した聖の拳が止められた。
「私は天の神と呼ばれし者です。
その効果は空に煌めく星々の力を操ります」
「星の力だと!?」
「えぇ。星そのものが生きるために無意識と作動している力。
マナと呼ばれし星のいわば命。
私はその力を自在に操ります」
星が活動するために必要な力。
それこそが『マナ』と呼ばれる力。
自然に満ちている魔力や、人の中に内包されている魔力とは全く異なる力だ。
まだ科学的にも解明されていない未知の力だ。
だが、星一つを動かすだけの力なのだ。
人の操る魔力一つで対抗できる力とは思い難い。
聖の神聖術は人の魔力を超えた代物だ。
それでも貫通しえないということは、星の魔力は神の力に相当するということで間違いないだろう。
「くそっ!」
拳を退くと同時に、入れ替えるように神聖術をまとった蹴りがエルヴィスに向かう。
だが。
ドォン!!
攻撃の面積分の広さの、青い粒子が再び膜を張りエルヴィスを守る。
「無駄ですよ。私の周囲にはマナの防御壁が常に展開しています。
人の攻撃は私には届きませんよ」
鼻で笑って言うエルヴィス。
魔神の力ですら抑え込んだ神聖術がかけらも通用しない。
聖は距離を取って奥歯をかみしめた。
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