第一節 始まり

13/17

1459人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
 ルネスが水練壁を発動したその瞬間にガーゴイルが突っ込んできた。  直線距離で50mほど離れた場所にいたはずの化け物は、1秒と掛からずその差を詰める。 「 ―ウグゥゥ……ジャマダァァ!! 」  2人の前に発生した壁に、ガーゴイルは正面からぶつかった。しかし、ストル同様全速力で衝突してるにもかかわらず、怯むようすは一切ない。  それどころか、あと1m程先にある極上の食料への道の行く手を阻む水の壁にガーゴイルは激昂し蹴りつける。幾度も幾度も打撃が与えられ、徐々に壁にヒビが入る。一撃一撃に壁が大きく歪んでいく。 「砕けろ!"風撃拳"!」  ガーゴイルが水練壁の破壊に夢中になっている隙に、クリアは風の拳を地面にぶつけ、周囲に砂けむりを発生させる。  そう、これが目的だったのだ。ただ魔物を背を向けて逃げれば、圧倒的な速さで殺されてしまう。であるならば、一度は対峙し、逃げる環境を作った方がいいとクリアは考えた。  幸い、校庭の地面は土と砂である。風を操るクリアならば、数秒あれば周囲一帯の土と砂を集ま、前が見えなくなるほどの砂けむりを発生させることができる。 「ルネス、今の内に逃げるぞ!」 「―マテェェ!!コドモーー!!!」  何も見えない砂けむりの中で、水が弾ける音と怒り狂うガーゴイルの声が響いた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1459人が本棚に入れています
本棚に追加