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キルの真っ直ぐな眼差しに対し同じく真っ直ぐな眼差しをして、レイラは言った。
彼女はキルの瞳に気圧された様子は一切ない。しかし、誠実に返していた。これがレイラの人柄なのだろう。
と同時に扉の外から慌てて走り去る音と転ぶ音が聞こえた。
「さぁ、行きましょうか」
レイラは笑顔でキルに言う。
「は、はい!」
キルが驚きながら頷く。
レイラは扉の前で盗み聞きをしていたという人間に対して言葉を掛けたが、その人物にキルは全く気が付かなかった。
クリアと同じように幼い頃から鍛練を積んできたキルは、気配を察知する力は人並み以上にあると自負している。確かに家ということもあり気を張っていたわけではない。しかし、それにしてもだ。
キルに気配を気付かせない人間ということは、恐らくヴァンス家当主の側近の誰かなのだろう。だからこそ、その人間に当たり前のように気がついた彼女に対してキルが驚くのは無理もない。
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