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ヴェゴウのノー第2節
「明日から長期休みだが、かといって遊んでばかりいるなよー。休み明けにはテストやるからな!」
担任の退屈な話は、外を眺めるターコイズブルーの髪色をした少年ークリアの頭に留まることはなく、声がただ右から左へと抜けていく。昼と夜が混ざった赤い空を彼は待ち望んでいた。
早く下校したい!と心の中で叫ぶ。明日から2節の長期休みとあって、今夜から五大貴族の正統後継者としての本格的な戦闘訓練が行われる予定だからだ。今までも戦闘訓練はあったが、体術と魔法の基本訓練だった。しかし、今夜からは魔物相手の実戦訓練が開始する。
待ちに待ったその時を目前にして、ワクワクした気持ちがどんどん高まっていく。
ふと教壇に立つ担任に目を向けると、その頭上の時計は下校時間まで残り10分であることを示していた。時間を急かすかのように、クリアは下校の準備をする。
机の中には、持ち帰られず放置された4ヶ月分の答案用紙がクシャクシャに入れられている。長期休み前最終日ということで、それらは仕方なく鞄に入れられた。
点数が悪い訳ではない。全て満点の答案である。ただただ、持って帰るのが面倒くさい。という理由だけで机の中に押し込められている。
クリアは正統後継者として幼少期から高度な教育を施されており、両親からすればテストなんて出来て当然というスタンスである。このため、改めて答案を見せろということもない。これも持って帰らない理由の一因となっている。
そうして、ゴチャゴチャした机の中にあるる物を無造作に鞄に詰めている時――
ーー街に警報が響いた。
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