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警報といっても原因によってその音は変わる。嵐など天候に関する警告、火事など事件事故に関する警告、都市への脅威に関する計画、その中でも、この、ビーーーッという長く低い音は都市への脅威ー魔物の襲撃を意味する。
中央都市ミストラルは周囲30kmに他の都市や村などはなく、代わりに草原や森など、魔物の生息する場所が多数存在している。よって、規模に差はあれど、数ヶ月に一度は魔物の襲撃がある。
「なんだ、魔物かぁ」
クラスの中からホッとした声が漏れる。
襲撃の頻度は高いものの、毎回、魔物達は都市の入口付近でギルドメンバーによって討伐され、街中に現れることはない。
このことから、住民にとってこの警報の恐怖対象ではなく、むしろ日常茶飯事といったところだ。魔物よりも、火災発生の警報の方が、生活に影響を及ぼすため、住民達にとって恐ろしいものであろう。
実際、今もクラス内、学校内で慌てふためいている者はなく、平然と授業が続けられている。
『魔物が来襲しました。一般人は家で待機又は近くの公共の建物に避難して下さい。ギルトメンバーは至急近くの門に向かって下さい。繰り返します……』
定型的な放送、生まれてから何度聞いたか分からない。
放送の指示に従い、学校に派遣されている戦闘員も現場に向かう。校内に響く走る音、これも誰もが飽き飽きするほど聞いている。
だが、いつもどおりの学校内で、五大貴族後継者の本能なのか、クリアは何かがいつもとは違う気がした。
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