第一章 ヴィレッタ村へ

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 レンが大岩に踏み潰されたと同時刻、セツナはその光景を栗の木のある丘の上から眺めていていた。  身長は180cm近くあり身体は服や鎧で分かりにくいがかなり鍛えられているように見える。鉄甲のついた手袋をはめて半そでのロングコートを羽織、コートのベルトには一本の両刃の剣が収められている。またその下には薄めのシャツに動きやすい長ズボン、足には軽めのブーツ型の鎧を履いている。身につけているものはいずれも黒に統一されていた。くせのある黒髪はとくに手入れされた跡はなく、ぼさぼさでその髪の下にはとても良いとはいえない目つきの悪い人相の顔があった。  職業は流れ者の傭兵でをやっている。 「全く…騒がしい奴だな…」  レンのドジっぷりを見て思わずため息をつくセツナ。  セツナもレンと同じ依頼でこの山に来ていたのだが・・・レンとは違って気配を殺して熊をやり過ごし、橋が壊れる前に渡りきり、落とし穴を避け、落ちている木の実を器用に踏まないで無事に栗の木までたどり着いていた。  依頼通りに栗を回収し終わり、一息ついていると、突然大きな音が…振り返ってみると転がる大岩から走って逃げているレンが目に入ったのだ。  セツナはため息をついた後、遠くで繰り広げられている逃走劇して 「そろそろ戻るか」  とりあえずバカは放っておくことにした。  踵を返して来た道を戻ろうとしたセツナだが栗の木の奥にあるものに気づき再びため息をつくことになる。 「こんなの地図には無かったぞ……」  セツナの目の前には通ってきた獣道とは別に多少ではあるが、人の手で舗装されたであろう通路が広がっていた。
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