第一章 ヴィレッタ村へ

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 7年前に大きな戦争があった。西にある魔術の国リメリアに東にある侍の国『天正』が突然攻めてきたのだ。  天正の軍勢は武器に長け、己の体を鍛え抜いて戦う者『侍』と呼ばれる者達で構成されており、近接戦において圧倒的な力を見せた。  しかし、初めは侍たちの猛攻に押され気味であったリメリア王国であったがそれも最初のうちだけで、直ぐに状況は変化した。  侍で構成されている天正に対し、リメリア王国は武器を操る騎士以外に魔術師や亜人族で構成されている。同じように近接戦闘を行う騎士軍とは互角以上に戦えた侍であったが、天正には無い奇妙な術『魔法』を使う魔術師や、人間を遥かに凌駕する能力を持つ亜人族には苦戦をしいられたのだ。  当然といえば当然のことである。  鍛えあげられた身体や技術といってもそれは人間の範疇の話しで、それを超えた力に敵わないのは道理だろう。  それでも侍たちは1年間も戦い続け、そして敗北した後に天正はリメリア王国の配下となった。これを西東戦争という。  戦後、リメリアは天正を従えたものの、決して奴隷のようにひどい扱いをしたわけでもなく、『人間』としての尊重は守っていた。  ところが、そのような処置を取られていても天正の一部勢力は負けを認めず、未だに反攻を繰り返している。自ら戦争を仕掛け敗北してもなおかつ反攻している天正の者は『礼儀知らずの野蛮な民族』というレッテルを貼られてしまったのだった。
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