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下を向き、鼻をぐしゅぐしゅしながら話し始めた。
T「俺、親居ないんすよぇぇ…。
そのせいで、友達も居ないし、頼る人も居ないし。
施設なんかで育てられるし。
全部親が悪いんすよぇ。俺はまともに頑張ってるのに周りは認めてくれないし。
ちゃんと育ててくれなかったから今、俺こんなんなんすよぇ。
でも、わかります?
親が居ない気持ち。
両親揃ってる人にはわからないすよぇ。」
ぐしぐし泣きながら、ぽつりぽつりと。
ア「…はぁ?……だから何?」
T「いや。だから、両親に育てられて幸せなんすから、俺みたいに可哀相な奴には優しくして下さいよ…」
鼻水でぐちゃぐちゃになった顔にアタシの平手打ちがヒットした。
ア「とことんまで腐っとんなぁ。何が可哀相じゃ、ふざけんな。世の中には貴様以上に可哀相で苦しんでる人がようさん居るんじゃ!なに自分ただ一人不幸の人ですよーみたいな演説してんの?きっしょ!!」
確か、もう一発平手打ちしてから
「施設に関わった人と世界中の人に詫びろ」
って怒った気がする。
アタシの友達にも施設に入ってた子が居ました。
理由は、両親からの虐待。祖父母も高齢で引き取れ無かったらしいですが…。
でも、この子は、自分を責めていました。
゛私がアカン子で役立たずやから゛
殴られたんや、と。
その子の友達で、同じ施設に入所してた子は、
母子家庭で育ったものの、忽然と母親が姿を眩まし、アパートに放置されてた所を、学校の教師と市の職員が訪ねて来て保護された、と。
二人とも、この苦しい記憶は小学生の時のもの。
覚えているそうです。
酷い孤独感も、ふとした瞬間に思い出し、感じるそうです。
どれだけ寂しかったか。
ぼれほど苦しかったか。
でも、この二人はどんな事があろうとも、親や施設の方に責任転嫁する事無く立派に社会人、主婦業をこなしています。
Tの生い立ちに同情はします。
それ以上でも以下でもありません。
ですが、それを言い訳にしたら駄目やと思うんです。
恨む気持ちがあっても
憎い人間に成り代わろうとも…
自分の人生を人のせいにし、
自分の行いを人任せにし、
自分の境遇を後ろ盾に使うコイツは許せませんでした。
じゃないと、
一生、その呪縛から解かれず、成り下がったままの人生になると思ったから。
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