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「深夜の町を歩いている時、酔っ払いのサラリーマン達を見てふと思ったんだ…。どうせこいつらは働いて得た金をほとんど酒に使ってるんだろうな…て。1銭もない俺にとっちゃ物凄く腹立たしいことだった…。俺が金に困っているのに、何無駄なことに使っているんだ…てね。そこで俺は盗みを働いて、現在に至るってわけだ…」
順平は想いだすように話す。
「でも、そう考えても盗みは絶対にいけないことだ…。それだけは約束しろ」
「分かってるよ。もう盗みはしない…。バイトして自分で金を稼ぐ事にするよ。じゃあな、同志に会えて色々楽しかったよ」
順平はそう言うと、ベンチから立ち、その場を立ち去ろうとした。
「待てよ」
充の言葉に順平は振り返る。
「何だよ」
「一緒に住まないか?」
「あ、それ良いね。順平、3人で一緒に住もうよ~」
「…せっかくだけど遠慮しとくよ…。俺、1人が好きだから…」
「そうか。じゃあもう言わない…またな」
「じゃあね」
充と武は順平が見えなくなるまで、見送る。
「じゃあ俺達も帰るか?」
「そうだね、じゃあ帰ろう」
2人も歩き始め、孤児院へ帰っていった。
★
あれから順平の姿を見ていない。
おそらく色んなところを旅してるんだろう。
「充~、何してるんだ?」
教室の窓を眺めている充の所に武が現れた。
「順平、元気かなって…」
「きっと元気だよ」
「…そうだな」
するとチャイムが鳴り始めた。
またいつも通りの生活が始まる。
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