203人が本棚に入れています
本棚に追加
第5話 充の初恋
今日は武が係の仕事で早く出たため、充は1人で登校することになった。
「はぁ~、1人だけだと話し相手がいないから暇だな~…」
あくびをしながら充は呟く。
充は登校する時、必ず川の上に架かっている橋を通って学校に向かう。
全然何も変わらない、いつもの橋だ…と思っていたが今回は違った。
1人の少女が柵に手をかけて、川を見つめていた。
「ここ…都会だと思っていたけど、意外と田舎だな~…」
少女が川を見つめながら呟いている。
「(何だ?こいつ…)」
普段充は気にも留めないが、何故か今回は気に留めてしまった。
何故気に留めてしまうのかは、充本人にも分からない。
すると、少女が突然振り返り、充に気がついた。
「あ!そこの君!」
「…俺?」
充が自分を指差して尋ねる。
「そう、君君。今何時か分かる?私時計どこかに落としちゃって…」
「今?今は…」
充は腕時計を見つめる。
「8時25分だよ。…8時25分?」
充はもう1回腕時計を見つめる。
学校の登校時間は8時30分までだ。
「やばっ!遅刻だ!」
充は学校に向けて走り始める。
「時間教えてくれてありがとうね~!」
後ろから少女のお礼の言葉が聞こえたが、そのまま振り返らずに走り続けた。
最初のコメントを投稿しよう!