284人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
リノリウム張りの廊下を、俺はトボトボと歩いていた。
上司からの突然の呼び出し。
怒られるようなことはしていないが、褒められることもしていない。
と、挨拶が遅れました。
俺は刻谷深也(コクタニ・シンヤ)。
18歳で、軍人やってます。
さてさて、我が上司様は、いったいどうしたわけで俺を呼んだやら。
呼び出された先、会議室のプレートが貼られたドアの前に立つ。
あぁ、やだなぁ……、怒るとむっちゃ怖いんだよな、うちの司令。
何かやったっけ? 滝川の阿呆と喧嘩して壊した机は弁償済みだし、演習で壊した戦車も修理したし、……真面目にわかんないなぁ、心当たりありすぎて。
うぅ、開けたくない、開けたくないけど逃げたら間違いなく殺される……
あぁ、火の国熊本に吹く風よ、我を悪しき災いのカドゥンより守れかし。
深呼吸して、さんざんためらってから開ける。
「あぁ、やっと来たね……」
窓からの逆行の中、彼が立っていた。
伝説の聖人でなければ、魔王と呼ばれていたであろう男。
戦巧者なだけでなく、政治的な手腕をも発揮し最早国を影から動かせかねない、伝説の英雄である。
「君には、次の戦場へ向かってもらう。そこで幻獣を駆逐し、現地住民と協力して幻獣の発生原因を調べてくれ。武運を祈る。――それじゃ、ゆかりんやっちゃって」
は? ゆかりん? 誰それ?
「えぇ、それじゃぁ、ありがたく借り受けるわ。ありがとう、あっちゃん」
背後から、女性の声。
後ろをとられた!?
急ぎ後ろを振り返……、あれ? 足元に目玉とか手とかいっぱいの穴が開いたよ?
「て、なんじゃこりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
この感覚は、世界移動!?
いやこれ、転属って言うか、拉致?
最初のコメントを投稿しよう!