初めての幻想入り

2/4
284人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
リノリウム張りの廊下を、俺はトボトボと歩いていた。 上司からの突然の呼び出し。 怒られるようなことはしていないが、褒められることもしていない。 と、挨拶が遅れました。 俺は刻谷深也(コクタニ・シンヤ)。 18歳で、軍人やってます。 さてさて、我が上司様は、いったいどうしたわけで俺を呼んだやら。 呼び出された先、会議室のプレートが貼られたドアの前に立つ。 あぁ、やだなぁ……、怒るとむっちゃ怖いんだよな、うちの司令。 何かやったっけ? 滝川の阿呆と喧嘩して壊した机は弁償済みだし、演習で壊した戦車も修理したし、……真面目にわかんないなぁ、心当たりありすぎて。 うぅ、開けたくない、開けたくないけど逃げたら間違いなく殺される…… あぁ、火の国熊本に吹く風よ、我を悪しき災いのカドゥンより守れかし。 深呼吸して、さんざんためらってから開ける。 「あぁ、やっと来たね……」 窓からの逆行の中、彼が立っていた。 伝説の聖人でなければ、魔王と呼ばれていたであろう男。 戦巧者なだけでなく、政治的な手腕をも発揮し最早国を影から動かせかねない、伝説の英雄である。 「君には、次の戦場へ向かってもらう。そこで幻獣を駆逐し、現地住民と協力して幻獣の発生原因を調べてくれ。武運を祈る。――それじゃ、ゆかりんやっちゃって」 は? ゆかりん? 誰それ? 「えぇ、それじゃぁ、ありがたく借り受けるわ。ありがとう、あっちゃん」 背後から、女性の声。 後ろをとられた!? 急ぎ後ろを振り返……、あれ? 足元に目玉とか手とかいっぱいの穴が開いたよ? 「て、なんじゃこりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 この感覚は、世界移動!? いやこれ、転属って言うか、拉致?
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!