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先程の巫女さんに中へ通され、日の当たる居間らしき部屋に案内される。
んで、座布団を勧められ、お茶を勧められと歓待を受けたり。
巫女さんて認識でいいのか、あれ?
茶菓子を取りに行く彼女の背を見ながら思う。
腋露出だわ緋袴てかスカートだわで、俺の知ってる巫女とはえらくかけ離れているような、いないような……
「はい、お茶請けは羊羮でいい?」
目の前に置かれたのは栗羊羮。
根っからの甘党である俺に、断る理由は微塵もない。
羊羮を一口いただき、茶をすする。
舌が痺れるほど熱いほうじ茶。
「む、旨い……」
思わず声が漏れる。
対面に座った彼女も、同じように茶を飲んでいる。
彼女の茶請けは煎餅だが。
「さて、と」
湯飲みを置いて、彼女がこちらを見た。
そろそろ、現状を説明してもらえるということだろうか。
「まず、ここはあなたがいた世界ではないわ」
あー、うん。そんなことだろうと思った。
「驚かないのね? それとも、信じられない?」
彼女の問いに苦笑を返す。
「いや、こういうことには慣れてるから。時空やら空間の裂け目に飲まれたり、誰かに頼んで送ってもらったり、WTGを使って自力で、とかね」
思えば、同じ世界に5年と居ないんだよな俺。
今までのことを思い出すと、苦笑やら溜め息やらで山ができそうな勢いだ。
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